北隆館

最先端コオロギ学 ~世界初! 新しい生物学がここにある~

SDGsに貢献する驚きの「コオロギ学」の世界!
製品情報
ジャンル・特集 専門書(北隆館)
著者/編集 野地澄晴(徳島大学学長)
定価 3,300円(本体3,000円+税)
発売日 2022.04.25
判 頁 A5判・並製・250頁
ISBN 9784832610125
概要

日本はコオロギ研究の先進国です。現在、コオロギは良質の食材(タンパク質)として、ミツバチ・カイコの次の「家畜化昆虫」として注目を集めています。とりわけ、SDGs(持続可能な開発目標)の「飢餓をゼロに」「気候変動に具体的な対策を」に対する貢献が期待されます。本書は、日本の先進的な「コオロギ学」の蓄積を一般の読者に分かりやすく紹介。コオロギの遺伝子、卵から成虫までの成長、コオロギの脚の再生、コオロギの脳と感覚器、コオロギの体内時計、コオロギの生殖行動、コオロギの行動学、コオロギに薬を作らせる話、コオロギ研究の未来等、まさに「コオロギ学大全」の登場です!

「日本では、コオロギの生物学者が比較的に多く、コオロギ研究の先進国になっている。一般的には知られてないことであるが、コオロギは食用だけでなく、生物の研究、あるいはヒトのモデル動物としても有用な昆虫である。実際、食べるワクチンとして利用する方法や薬を製造する生物工場としての利用などが研究されている。日本では、コオロギを用いた研究が長年にわたり行われ、コオロギに関する様々な知識が得られている。このようなコオロギは、ミツバチ、カイコの次に家畜化昆虫として認識され、研究されてきている。そして、ここに新しい学問である「コオロギ学」が誕生したのであるのである。しかし、その知識は専門的であり、世界の多くの人々は、コオロギに関する知識を得る機会がないのが残念である。また、日常的に食べることになるコオロギについて知ることができる入門書的な本が必要であると感じていた。そこで、コオロギに関する主な研究内容を野地が執筆し、それぞれの分野の専門家に、共同執筆者として修正・追加などをしていただいた(「はじめに」より)」。

目次

第1章 コオロギ研究の歴史Ⅰ
序  コオロギ:ヒトのモデル生物であり、最強の食材でもある
1.1 ショウジョウバエからコオロギへ
1.2 コオロギ:新規モデル生物
1.3 食用として、またモデル動物としてのフタホシコオロギ
1.4 白い眼のフタホシコオロギ
1.5 日本のムーンショットプロジェクト:コオロギ
1.6 コオロギ:第3の家畜化昆虫になる
1.7 循環型食料としてコオロギ

第2章 コオロギ研究の歴史Ⅱ
序  コオロギの体内時計、記憶、行動、発生・再生
2.1 コオロギの体内時計の研究
2.2 コオロギの記憶の研究
2.3 生物の形づくりの基本原理:コオロギもヒトも同じ
2.4 昆虫の擬態を研究しよう

第3章 コオロギの遺伝子
序  DNAの2重らせん構造とケンブリッジ
3.1 DNAからゲノムプロジェクトへ
3.2 コオロギのゲノムの構造
3.3 コオロギの染色体
3.4 コオロギの性決定
3.5 コオロギのゲノム解析
3.6 コオロギとヒトと共通の祖先:カンブリア爆発
3.7 ヒトもコオロギも生物の基本原理は同じ!

第4章 コオロギはどのように作られるかⅠ  卵から孵化まで
序  コオロギの初期発生
4.1 コオロギの初期発生過程
4.2 コオロギとショウジョウバエの形を制御する遺伝子群
4.3 体節に特徴を付けるホメオティック遺伝子群
4.4 ホメオボック遺伝子の発見:形態形成に普遍的に必要な遺伝子
4.5 コオロギの初期発生とホメオボックス遺伝子クラスター
4.6 コオロギの複眼の形成とPax6(パックス6)
4.7 Pax(パックス)遺伝子群とヒトの病気との関係
4.8 コオロギの脚の形成と進化

第5章 コオロギはどのように作られるかⅡ  幼虫-変態-成虫
序  コオロギ幼虫の成長:ホルモンによる制御
5.1 脱皮・変態に関係する前胸腺刺激ホルモン(Prothoracicotropic hormone(PTTH))
5.2 脱皮のタイミングや回数は2つのホルモンにより制御されている
5.3 コオロギの変態のメカニズム:幼虫から成虫への遷移
5.4 幼若ホルモンの生合成に関わるTGF-シグナルの機能
5.5 昆虫変態に関わる分子メカニズムの進化
5.6 「ヒトの不完全変態」の制御について
第6章 コオロギの切断された脚の再生メカニズム ― 自然免疫が関係 ―

序  コオロギの切断された脚は再生する
6.1 昆虫の脚の再生
6.2 脚の位置情報について
6.3 位置情報の実体分子ファット・ダクサスと脚の長さを決めるメカニズム
6.4 ヒトへの応用がカギ
6.5 コオロギの免疫とヒトの免疫の関係
6.6 コオロギの免疫と脚の再生
6.7 脚再生とエピジェネティクな調節

第7章 コオロギの寿命の決定について
序  コオロギの寿命とヒトの寿命
7.1 健康に寿命が延長できる
7.2 カロリー制限と寿命の関係を科学的に解明する
7.3 寿命と体のサイズは何が決めているのか?
7.4 チコのRNA干渉による小型で長寿なコオロギの作製
7.5 インスリン・IGF-1シグナル伝達経路
7.6 ラパマイシン標的タンパク質(TOR)伝達経路
7.7 サーチュイン・シグナル伝達経路
7.8 寿命は体内時計に関係している

第8章 コオロギの価値を高めたRNA干渉の降臨
序  奇跡的な遺伝子機能の解析法:コオロギのRNA干渉(RNAi)
8.1  RNA干渉法の発見にノーベル生理学医学賞
8.2 ノーベル賞のきっかけになったアンチセンスRNA法
8.3 対照実験からノーベル賞
8.4 RNA干渉のメカニズム
8.5 コオロギにおけるRNA干渉
8.6 コオロギの卵に生じる奇跡的なRNA干渉
8.7 ヒトの難病の遺伝子とRNA干渉とコオロギ
8.8 脆弱X症候群遺伝子FMR1を抑制するとコオロギの鳴き声が変化

第9章 コオロギの体内時計
序  ハエもコオロギも必要な睡眠:体内時計のノーベル賞
9.1 コオロギの体内時計はどこにあるのか
9.2 昆虫体内時計の多様化を解明する糸口を発見
9.3 季節を測る時計

第10章 コオロギも考える ―微小脳
序  条件付けの研究
10.1 コオロギとバニラとペパーミントの匂い
10.2 微小脳の記憶のしくみはヒトの脳と同じ
10.3 ショウジョウバエの記憶異常と遺伝子の変異
10.4 コオロギの記憶形成について
10.5 学習によるキノコ体ニューロンの活動変化を捉える
10.6 昆虫はどこまで高度な学習を示すのか?
10.7 コオロギの加齢性記憶障害とメラトニン
10.8 記憶力を改善するメラトニン

第11章 コオロギの生殖行動
序  鳴くことから始まる生殖行動
11.1 鳴くメカニズムについて
11.2 コオロギの歌の進化
11.3 コオロギの求愛と行動
11.4 産卵:地中に卵を産む

第12章 コオロギの感覚器
序  コオロギのセンサーとバイオミメティクス
12.1 コオロギの鳴き声により気温がわかる:ドルベアの法則
12.2 コオロギに学ぶ:バイオミメティクス
12.3 コオロギの耳:最小・高感度・広帯域の聴覚器

第13章 コオロギの行動学
序  中国の伝統:コオロギ相撲
13.1 闘争を支配するもの
13.2 コオロギの集団における振る舞い
13.3 死にまね

第14章 コオロギに薬を作らせる
序  ゲノム編集法  ― 2020年のノーベル賞
14.1 昆虫のゲノム編集法
14.2 コオロギのゲノム編集技術の開発
14.3 緑に光るコオロギ:トランスジェニック
14.4 医薬品工場としてのコオロギの特徴

第15章 コオロギ研究の未来
序  次世代の家畜化昆虫としてのコオロギ
15.1 SDGsの2番:飢餓をゼロに!を達するために
15.2 将来の環境変化に対応する革新的なコオロギ養殖技術の開発
15.3 擬態の研究:花カマキリ
15.4 昆虫のシンギュラリティ(脳との連結)
15.5 コオロギ研究所:最先端生物学の発展を担うコオロギの研究

文献
索引
編・著者略歴
あとがき

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