考古調査ハンドブック㉑ 近世墓標
ジャンル・特集 | 考古調査ハンドブック |
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著者/編集 | 三好義三(大阪府 阪南市役所) |
定価 | 3,630円(本体3,300円+税) |
発売日 | 2021.01.20 |
判 頁 | A5判・並製・246頁 |
ISBN | 9784821605330 |
寺院墓地や共同墓地は日本の津々浦々に広く点在しています。その多くの墓地は、江戸時代以降に成立しており、これらの墓地に建立された「古い墓石」が「近世墓標」です。
従来、近世墓標は石造美術の資料として調査・研究が進展してきましたが、近年、考古学の手法による実測図の作成と写真が主流となり、日本各地での調査の蓄積、対象資料の歴史的背景の解明も大きな進展を見せています。
近世墓標はもっとも身近な考古学の資料であり、地域史の解明、仏教考古学の研究にとって重要な研究テーマとなっています。本書は、研究史・地域の様相・形態の諸相・類型と変遷を広く俯瞰し、貴重な「関係文献目録」を附載しました。全国各地の墓標を訪ね歩き、広い視野から調査と研究に携わってきた著者の知見が満載のハンドブックです。
「三好義三さんの『近世墓標』は、各地域の調査と研究の現状を鳥瞰するとともに『関係文献目録』を付載したハンドブックである。近世墓標の調査を若い頃から間断なく続け『近世墓標の形態と民衆の精神の変化について』(1986)を手始めに多くの論文を発表し、全国に資料を訪ねて広い視野から調査と研究を進めてきた著者の知見を総括している」(坂詰秀一「近世墓標調査のさらなる促進を期待」より)
「本書の執筆を通じて、近世墓標は同じ地域でも、また隣接する寺院や墓地であっても、その造立傾向や特徴などが異なった様相を呈していることを再認識し、あらためて近世墓標に関する研究の課題やテーマなどが多々あることを実感した。これらの課題に取り組むには、全国的に見て未だ調査事例のない空白地域(関東や近畿中部、九州など)では、旧村、旧郡単位での面的な調査が必要ではないかと思う。本書がこれから近世墓標の研究に取り組もうとする方々への問題提起になり、それぞれの地域で少しでも調査がなされればと願っている」(著者「あとがき」より)。
《口絵》 Ⅰ~Ⅱ
近世墓標調査のさらなる促進を期待(坂誥 秀一) 3
目 次 4~6
Ⅰ.近世の墓標と研究史 7~26
①近世墓標とは 8
1.はじめに 8
2.近世墓標の調査に当たって 9
3.近世墓標の形態分類 13
②近世墓標研究史 18
1.第1期 「萌芽期」 18
2.第2期 「発展期」 19
3.第3期 「確立期」 21
4.第4期 「新展開期」 25
Ⅱ.近世墓標の地域的実相 27~172
①北海道・東北地方の様相 28
1.北海道 28
2.青森県 30
3.岩手県 31
4.宮城県 32
5.山形県 35
②北関東地方の様相 39
1.群馬県 39
2.栃木県 43
3.茨城県 45
③南関東地方の様相 46
1.江戸御府内 46
2.御府内周辺(東京都区内) 48
3.多摩地区 54
4.神奈川県 56
5.千葉県 59
6.埼玉県 65
④甲信越・北陸地方の様相 73
1.山梨県 73
2.長野県 73
3.福井県 77
4.石川県 80
5.富山県 83
6.新潟県 86
⑤中部・東海地方の様相 91
1.愛知県 91
2.三重県 92
3.静岡県 100
⑥近畿地方の様相 108
1.山城南部・大和 108
2.京都市内(洛中) 120
3.摂津,河内,和泉 122
4.五畿内周縁部 126
⑦中国・四国地方の様相 129
1.山陽地方 129
2.山陰地方 131
3.四国地方 141
⑧九州地方の様相 147
1.福岡県 147
2.佐賀県 155
3.大分県 155
4.熊本県 166
5.宮崎県 170
6.鹿児島県 172
Ⅲ.近世墓標の様相 173~198
①形態別の様相 174
1.一石五輪塔 174
2.舟型光背五輪塔 180
3.駒型(尖頭駒型)墓標 183
②造立層の様相 188
1.有力武士層 188
2.公家 190
3.儒者 190
4.神職 192
5.有力商人,農民等 193
Ⅳ.近世墓標の若干の特性 199~210
①頭書 200
1.頭書とは 200
2.烏八臼について 201
3.頭書の調査事例 202
②陶製墓標 208
1.島根県・石見銀山遺跡における事例 208
2.大阪府南部-泉南地域-における事例 208
3.愛知県高浜市における事例 209
4.三重県津市称名寺の事例 210
5.大分市當陽寺の事例 210
Ⅴ.近世墓標の類型と変遷 211~220
①近世墓標の主要な類型 212
1.塔形墓標 212
2.非塔形墓標 213
②近世墓標の類型の変遷 218
③近世墓標の変遷と画期 219
文 献 221~243
索 引 244~246
あとがき(三好 義三) 247