北隆館

環境Eco選書⑩ 冬芽と環境

~成長の多様な設計図~
製品情報
ジャンル・特集 環境Eco選書
著者/編集 八田 洋章(国立科学館名誉研究員・樹形研究会代表)
定価 5,060円(本体4,600円+税)
発売日 2014.12.25
判 頁 A5判・並製・340頁
ISBN 9784832607606
概要

本書は、冬芽の基本的な構造とその展開に関して、分子生物学からウオッチングまで、詳細な過程解説と様々な研究例が、多方面から取り上げられています。タケ類、シダ類などの越冬の姿や、熱帯樹木の「待機する芽」なども含めた、冬芽(休眠芽)についての知見を集結したこれまでに類例のない解説書となっています。

本書がとくに重点をおいた論点は、器官形成や花成誘導に関する遺伝子の発現機構など、冬芽に関する最先端の情報の発信です。「冬芽」あるいは「休眠芽」から出発した枝がどのように茎を伸ばし、花や実をつけ、木の形を作っていくかなどを多方面から検証。樹木に限らず、広く植物の越冬する姿も紹介しています。タケ類や草本類はもちろん、シダ類、コケ類などの「冬芽」にも言及しています。身近なスギやヒノキの冬芽の正体に言及し、それらの植物群にとって冬芽とは何なのかを考察します。熱帯雨林域に生育する樹木にも「芽」はあり、その「芽」は、次の伸長時に備えて「待機する芽」という意味合いをもっています(年に3度、4度と伸長する姿なども扱っています。たとえ冷温帯域産の樹木であっても、種群によってはそれらの「裸芽」や「鱗芽」の由来を考察するとき、漠然とであれ、暖温帯や熱帯樹木の芽の状態との関わりを抜きには出来ないからです)。

目次

Ⅰ.冬芽とは何か
冬芽と環境 Winter Buds
菊沢喜八郎 Kihachiro Kikuzawa)
冬芽の種類とそのウオッチング How to observe the winter buds
八田洋章Hiroaki Hatta)
常緑広葉樹の芽タイプ―第3 の冬芽「苞芽」の提唱
Three bud-structural types of evergreen broad-leaved trees
大澤雅彦Masahiko Ohsawa)
花芽形成の遺伝的制御機構
Molecular mechanisms for controlling flower bud formation
(久本洋子Yoko Hisamoto)
冬芽の器官形成と発達経過 Initiation and development of floral organs in winter bud
(伊東明子Akiko Ito)
冬芽のコラム1 ヤマボウシの花序形成と花葉の発生経過
( 八田洋章Hiroaki Hatta)
いろいろな冬芽の使い分け―芽構造の個体内変異とシュート伸長の可塑性―
The right bud in the right location: Within-crown variations in bud structures and the plastic
shoot growth in broad-leaved tree species
(八木貴信Takanobu Yagi)
多様な針葉樹の冬芽 Winter bud diversity in conifers
(逢沢峰昭Mineaki Aizawa)
〈熱帯雨林からのリポート〉
熱帯樹木は1 年に何度伸びるか
Rhythmical shoot-growth patterns in tropical trees
(八田洋章Hiroaki Hatta)

冬芽のコラム2 五つに分枝する枝が乾燥/寒冷気候に「適応」した?
( 本多久夫Hisao Honda)
冬芽のコラム3 鱗芽は裸芽から派生したか
( 八田洋章Hiroaki Hatta)
Ⅱ.さまざまな植物の冬芽,越冬の姿
タケ類における冬芽 Winter buds in the Bambusoideae plant
(小林幹夫Mikio Kobayashi)
草本植物の冬芽と越冬 Life-forms and winter buds of perennial plants
(森田竜義Tatsuyoshi Morita)
冬芽のコラム4 ミズタカモジグサの休眠芽(夏芽)の形成と休閑田適応性
( 阪本寧男Sadao Sakamoto)
冬芽のコラム5 水草の冬芽―水生環境への適応進化―
( 田中法生Norio Tanaka)
冬芽のコラム6 シダ植物の冬芽
( 松本 定Sadamu Matsumoto)
冬芽のコラム7 コケ類の冬芽
( 樋口正信Masanobu Higuchi)
冬芽のコラム8「 芽」も「葉」もない藻の話―海藻にとって冬は成長の季節―
( 北山太樹Taiju Kitayama)
冬芽のコラム9 子座と菌核―菌類の冬芽?―
( 細矢 剛Tsuyoshi Hosoya)
Ⅲ.冬芽の伸長と展開,その実証的研究
成長段階によって変わる冬芽や枝の伸ばし方―カバノキ属の例
Ontogenetic changes in bud production and branching: an example in Betula
(石原正恵Masae Ishihara)
広義サクラ属の冬芽の多様性―冬芽の形態は系統を反映するか?
Variation in winter buds of Prunus s.l. with special reference to its phylogeny
(岩元明敏Akitoshi Iwamoto)
ヤマボウシの樹冠形成と開花周期
Crown formation and flowering cycles in Cornus kousa
(八田洋章Hiroaki Hatta)
Ⅳ.フェノロジー調査の現場から
樹形研究会紹介
カエデ属における冬芽の構造とその伸長
Winter bud structure and phenology in Acer trees
(尾谷幸寿Kouji Otani)
矮小低木類の冬芽と越冬
Phenological observations of several dwarf-shrubs growing in alpine zone
(鈴木崇夫Takao Suzuki)
モクレン属の冬芽とその展開―芽鱗は托葉由来
Development of winter buds wrapped in stipulous scales in Magnolia trees
(渡邉途子Michiko Watanabe)
日本産ヤナギ科樹木の冬芽
Winter buds and shoot growth of Salicaceous species with special reference to leaf primordia
(山田寛治Kanji Yamada)
おわりに(八田洋章Hiroaki Hatta)
種名索引
事項索引

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