北隆館

環境Eco選書⑬「水生半翅類の生物学」

生活史・生態・系統関係・絶滅要因・保全事例を詳説!
製品情報
ジャンル・特集 環境Eco選書
著者/編集 大庭伸也(長崎大学教育学部)編
定価 4,510円(本体4,100円+税)
発売日 2018.06.22
判 頁 A5判・並製・320頁
ISBN 9784832607637
概要

水生半翅類は、水生生活を営む「カメムシの仲間」です。アメンボ、タガメ、ミズカマキリ、タイコウチ、コオイムシ等、人気のある水生昆虫が含まれます。水田・河川・池沼など人間と密接な水環境に生息し、現在、国内に分布する3分の1の種が「環境省RDL」(2014版)に掲載されています。本書は、第一線の研究者が、高校生にも理解できるように、その生活史・生態・系統関係・絶滅要因・保全事例など、最新の研究成果を平易に解説しています。

「水生半翅類は水中のみならず水面にも生息する昆虫類で,前者にはタガメやミズカマキリ,後者にはアメンボやイトアメンボが含まれる。きっと19 世紀中頃までの日本では,『身近な水辺で見られる読者にもなじみ深い昆虫』,と紹介されたであろうが,残念ながら現在では身近では見られなくなった種も多くなっている。水生半翅類で2014 年改訂の環境省RDL に掲載されているものは絶滅危惧ⅠA 類が3 種,絶滅危惧ⅠB 類が1 種,絶滅危惧Ⅱ類が8 種,準絶滅危惧が18 種であり,国内に分布する種の約1 / 3 が掲載されていることになる。彼らが住む水辺環境は河川や湖沼,水田や水たまりなど多岐にわたる。いずれもヒトの手による改変を受けやすい環境であり,種によっては水辺環境のみならず,その周辺の環境の改変も個体群の存続に対して影響が大きかったものと推測される。減ったと言われる種がなぜ減ったのかを考察するには,科学的な知見の収集は欠かせない。もちろんそれだけでは減った種を保全していくことはできないが,長期的な視野で保全を実践するには,やはり,科学的知見を積み上げて考察する必要がある。絶滅危惧種になるまでに減った理由を考察するためには,基礎データが少ない,と今から十数年ほど前から言われ続けてきたが,本書にご協力いただいた執筆者らの貢献もあり,ここ数年でさまざまな側面から面白い生物学的知見が集積されたと私は感じている。本書は生物に興味がある高校生,これから研究を始める大学生や大学院生,そして環境アセスメントや環境教育や保全に携わる人が知りたい内容,あるいは水生半翅類が主に生息する水田を管理する農家の方に知っていただきたい内容を目指したつもりである。本書を手に取った人が水生半翅類の生物学的知見とヒトとのかかわりを概観できるとともに,これまでに足りない知見を整理した上で,今後の研究や保全策を目指す羅針盤となれば,編集者としてこれ以上の喜びはない。また,各執筆者から頂いた原稿に添付される写真は読者の目を引くような美しいものが多かったため,口絵と本文の両方にカラー版とモノクロ版を配置することとした」(「はじめに」より)。

目次

はじめに(大庭伸也)

Ⅰ.水面に住む水生半翅類の生活史と環境適応

1 イトアメンボ科の生態と生息環境  村田浩平
2 淡水産アメンボ科昆虫の生活史と環境適応  原田哲夫
3 ウミアメンボ類の特性,分布,耐性  原田哲夫・古木隆寛

Ⅱ.水中に住む水生半翅類の生活史と環境適応

1 コンクリート水路の絶滅危惧種・トゲナベブタムシ  市川憲平
2 風船虫のなぞ―ミズムシ科の生態と人との関わり  中西康介
3 タガメとオオコオイムシの生活史  向井康夫
4 稲作水系におけるタイコウチとコオイムシの生活史  大庭伸也
5 東日本大震災の津波跡地における水生半翅類相の変化  三田村敏正

Ⅲ.他種との関係

1 アメンボと卵寄生蜂の水面下での争い  平山寛之
2 水生半翅類に取り付くミズダニ  安倍 弘
3 ヒメタイコウチの偏在と局在:その景観-群集生態学的アプローチ  松本 功・中尾史郎
4 タガメの採餌戦略  大庭伸也・立田晴記
5 タイコウチ上科の採餌生態:直接的・間接的に餌に及ぼす影響  大庭伸也

Ⅳ.系統地理学的研究

1 コオイムシ類の分子系統解析から紐解く日本産水生半翅類相の形成プロセス  鈴木智也・東城幸治

Ⅴ.水生半翅類の調査法

1 水生半翅類調査への環境DNAの適用  土居秀幸・片野泉・東城幸治
2 小型水生半翅類の生息環境と調査方法  渡部晃平

Ⅵ.絶滅要因と保全事例

1 タガメが減少した要因―なぜ全国的に激減したのか?-  渡部晃平・大庭伸也
2 外来種が水生半翅類に与える脅威  大庭伸也
3 19年目のタガメビオトープ  市川憲平

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