北隆館

環境Eco選書⑪ クモの科学最前線

~進化から環境まで~
製品情報
ジャンル・特集 環境Eco選書
著者/編集 宮下 直(東京大学大学院農学生命科学研究科)
定価 3,850円(本体3,500円+税)
発売日 2017.03.20
判 頁 A5判・並製・252頁
ISBN 9784832607613
概要

最近20年間で、クモに関して1年間に発表される論文の数はおよそ7倍に増えました。近年クモに関する研究は急速に進んでいます。身近にいながら以外に知らないクモ研究の最新事情を、環境との接点を中心に紹介します。

本書では、クモの系統、進化、行動、生態、糸の活用などについての幅広い話題を紹介します。

第1章では,クモの種数や系統推定にまつわる話題がまとめられています。DNA解析の普及による新展開は、新たな課題も提供しています。

第2~4章では、クモの行動や生態に関わる適応や進化が紹介します。クモの代表的な網である円網のデザインと機能の関係、餌の特殊化がもたらす進化的・生態的な意義、さらにクモを餌として利用する生物の多様な生態など、一昔前では想像もつかなかったようなトピックが満載。

第5~9章では、クモと環境の関係をとりあげます。ここでは、生物多様性の保全や生態系影響評価など、自然と人との関わりを「クモ目線」から捉えます。生態系のタイプごとの括りに加え、クモの親戚である「ザトウムシ」と環境との関係や、福島原発事故の影響についても扱っています。

最後に、トピックな話題として、スパイバー社による「クモ糸の実用化」についての夢のある挑戦を紹介しています。クモ糸が製品としてだけでなく、環境問題にも貢献できるという先進的な主張を紹介しています。

目次

Ⅰ.進化と多様性 Evolution and diversity

1.クモの系統と多様性 Phylogeny and diversity of spiders
(谷川明男 Akio Tanikawa)
クモの多様性/クモの系統
2.クモの網の特徴とその機能 Spider web: its function and structure
(中田兼介 Kensuke Nakata)
網の多様性/円網に見られる餌捕獲のためのデザイン/網の特徴の変異を生みだす要因
3 クモと餌 Spiders and their prey
(宮下 直Tadashi Miyashita)
餌の量と質/多様な餌メニュー/クモの専食/植物食/餌の特殊化研究の展望
(コラム)安定同位体を用いた「食う・食われる」の分析
(宮下 直 Tadashi Miyashita)
4 クモと天敵 Natural enemies of spiders
(髙須賀圭三 Keizo Takasuka)
脊椎動物/無脊椎動物
(コラム)クモカリドリ
(髙須賀圭三Keizo Takasuka)

Ⅱ.生態系との関わりSpiders and ecosystems

5 森林とクモ Spiders in forest ecosystems
(原口 岳Takashi Haraguchi)
クモにとって森林はどんな所か?/クモの生息に関わる要因/森林クモ群集のダイナミクス
6 里山とクモ Spiders in Satoyama
(吉田 真 Makoto Yoshida)
里山とは何か/里山の生物多様性/里山のクモの多様性/里山の消失と荒廃がクモに与える影響/里山のクモの生息・分布情報蓄積の重要性
7 磯や浜辺のクモ Spiders on the coast
(谷川明男 Akio Tanikawa)
海岸でも生きられるクモ/海岸を選好するクモ/イソコモリグモとは/イソコモリグモの生息適地/日本海東側沿岸の固有種/砂浜の危機/イソコモリグモには大きな移動能力があるのか?/イソコモリグモの移動能力は小さい/厳しい生活環境/起源は島根・鳥取?
(コラム)イソコモリグモの集団構造の解析
(谷川明男Akio Tanikawa)
8 水田のクモSpiders in rice paddy ecosystems
(馬場友希 Yuki Baba)
水田に生息するクモの多様性/クモをとりまく生物間相互/クモの個体数・種数に影響を及ぼす要因/農業環境指標生物としてのクモ/今後の展望
9 放射能とクモ Spiders and radioactive contamination
(肘井直樹Naoki Hijii・綾部慈子Yoshiko Ayabe)
原子力発電所事故で放出された放射性物質による生態系の汚染/生態系のなかのクモ/放射性物質濃度モニタリングにおける指標生物としてのジョロウグモ/放射性物質のジョロウグモへの移行/クモと放射能
(コラム)放射能と物理的半減期/? 空間線量率/? 生物学的半減期(肘井直樹Naoki Hijii・綾部慈子Yoshiko Ayabe)
10.ザトウムシの生息環境Habitats of Japanese harvestmen
(鶴崎展巨Nobuo Tsurusaki)
ザトウムシの4亜目と生活様式/ザトウムシの生息地/拡大を制限する要因/標高/林床環境/渓流:サトウナミザトウムシなど/タケ林:ゴホントゲザトウムシ/河川氾濫原・堤防:フタコブザトウムシ/高山帯:スジザトウムシ/海岸:ヒトハリザトウムシ/都市公園・道路沿い:マザトウムシ/洞穴/まとめ

Ⅲ.糸の活用Utilization of spider silk

クモ糸の活用Practical use of spider silk
(菅原潤一Junichi Sugahara・関山和秀Kazuhide Sekiyama)
クモ糸との出会い/クモ糸は「世界一タフ」な繊維/クモは糸作りの天才職人/クモ糸実用化に向けた世界の先端研究/地球環境への貢献

引用文献
Ⅳ.索引
種名索引
事項索引

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